所属する派遣添乗員に度重なるサービス残業をさせたとして、中央労働基準監督署がJTBの100%子会社「JTBサポートインターナショナル」(東京)に、労働基準法違反で是正勧告を出した。颯爽と世界を股に掛けるイメージの添乗員だが、水面下では親会社にいいように使い捨てられる、ハケンの悲哀が繰り広げられているようだ。 身分「みなし労働者」、日当は最高でも1万円 「ピーク時には1週間分の着替えを詰めたトランクを2個用意し、1つは成田空港に置いておく。10日間のヨーロッパ添乗から帰国した翌日、再び1週間のヨーロッパ添乗に出るためで、1つのツアーを無事に終了させても、帰宅する余裕などまったくない」 こう話すのは大手旅行会社系列の女性派遣添乗員(30)。時間管理ができないとされる「みなし労働者」の彼らが1日単位で支給される日当は、添乗経験日数によってランク分けされ、業界最高レベルでも1万円程度。身分はあくまで契約社員で、閑散期には仕事が激減するうえ、社会保険なども付与されず、身分は不安定なままだ。 個人客対象の「募集ツアー」と、支店の法人顧客や修学旅行が対象の「企画手配ツアー」で彼らの労働環境は異なるが、厳しい現実に変わりはない。 「募集ツアーの場合、事務所での引き継ぎ、お客さま全員へ事前連絡、ツアー実施、精算が基本的な流れで拘束時間が長い。ツアー内容も代金格安化の中、国内でも海外でも、観光の合間に人数単位でキックバック(手数料割り戻し)が受けられる土産物店を組み込み、スケジュールがパンパン」(先出添乗員) ツアー中の客のわがままやトラブルには24時間の対応が必要だ。「安いツアーほど、クレームや要求が多い“モンスターカスタマー”の発生率が高い」(同)。モンスターは他の参加者からも煙たがられるため、結果的に添乗員が付きっきりで面倒を見るというから、ストレスもたまる。 モンスターは少ないが、企画ツアーの添乗でも、彼らの心労は絶えない。 「服装はなぜかスカート指定。夜中まで宴会に付き合って、カラオケ中に手を握られたりハグされても、支店の顧客である以上、我慢するしかない」(同)。中年女性が多い呉服ツアーでは、男性添乗員が逆セクハラの餌食になることも。 「浴衣姿で各部屋ごとの2次会に“慰問”させられ、イッキ飲みの連続。気が付けば朝方、全裸で廊下に倒れていた。誰かが股間に手ぬぐいを掛けてくれていたのがせめてもの救いだった…」(男性元添乗員) 大手旅行会社幹部「待遇に文句言うならなるな」 男性添乗員が女子生徒にチヤホヤされそうな修学旅行も、現実は甘くはない。 「特に公立中学校では、朝から晩まで、男子の不良生徒か先生の『お守り』ばかり。夜は、反省会と称した旅行会社負担の飲み会に付き合わされます」(同) 大手旅行会社幹部は「世界各地の観光地を仕事で回れるのは添乗員だけ。そのことも待遇の一部と割り切っているからこそ、多くの添乗員は頑張ってくれるし、経営も成り立つ。待遇に文句を言うくらいなら、始めから派遣添乗員などなるべきではない」と本音を吐露する。添乗員という「派遣社員」の待遇改善の望みは薄そうだ。
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